2007年2月28日 (水)

いつか子供に読ませたい!61

本日は、大切な友人から「取り上げて欲しい!!」と要望のあった本について、です。私自身もいずれは取り上げるつもりではありました。それほど、「決して忘れてはならない大切なもの」がたくさん書かれた本だと思っているからです!友人も同じような気持ちだと思っています。

はせがわくんきらいや」をご存知の方はいらっしゃるでしょう。かなり昔からある本です。ただ、現在出回っているものは、読者のリクエストにより復刊されたものです。

昭和30年代、忘れてはならない、「ヒ素ミルク事件」が起こりました。私が生まれる前の事件ではありますが、母親からも聞かされましたし、私の尊敬する小・中学校の教師からもいろいろと教わりました。

今もいろんな事件が起こり、たくさんの方が犠牲になっていますが、何年経とうと、こういう事件は決して忘れてはなりません!!

この本に登場する「長谷川くん」は、この事件の被害者です。

お話は、この「長谷川くん」の幼馴染の「ぼく」の語りですすめられます。

関西弁を使い、素直な心情を書き綴っています。

「ぼく」は「長谷川くん」がきらいや!とはっきりと書いてありますが、本当にそうでしょうか?私にはそうは思えません。

いろんな言葉を使って「長谷川くん」の事を書いていますが、いろんな部分で「長谷川くん」への子供らしい気遣いが感じられます。

「長谷川くん」の抱えた事情を聞いた「ぼく」。これからも子供らしい感情で、子供らしく接していくに違いないー私はそう思っています。「ぼく」が「長谷川くん」から離れることはないでしょう。

印象的なのは文章だけでなく、丁寧に作られた版画の挿絵です。子供だけでなく、大人も一度見れば、決して忘れられないでしょう。「ぼく」の見た、感じたものが素直に表現されています。この絵も、この本の大切な役割を果たしています。

筆者の、事件に対する強烈な怒りも滲み出ています。忘れてはなりません。そして、こういう本は、いつまでも残しておくべきです!!

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2007年1月22日 (月)

久しぶりに…15

本当に久しぶりに、宮沢賢治の、「ガドルフの百合」を読みました。

本当に短いですし、使われている言葉も比較的ぶっきらぼうだと思いますが、解釈が難しいお話の一つだと思います。私の場合、この本を読む前に、宮沢賢治の伝記等、いくつか読んでいたのですが、そこから推測するしかありませんでした…。

ガドルフという青年が旅をしている様子から始まりますが、この冒頭の場面で、何となく、ガドルフの「激しいようで冷めた性格」が感じられます。

途中で雨が降り出し、洋館に立ち寄り、いろんなものを目にするのですが…。

ここに出てくるものが、「宮沢賢治」自身の過去の経験を書き出しているようです。あまり詳しく書くと、この本の内容が分かりすぎてしまうので、簡単に…。

まず、ガドルフが雨に遭い、飛び込んだ洋館。ガドルフ自身が「避病院?」と感じていますが、これは、賢治自身が若い頃に病気を患い、病院に入院していた際の事に関連しているのでは?と思われます。

そして、何より、強烈な印象の「白い百合」。これは、賢治がその病院で好きになった女性を表しているようです。この百合に対するガドルフの感情も、「恋している」と書かれています。だから、ガドルフは賢治自身を指すのでしょうね。

ただ、ご存知の方も多いと思いますが、宮沢賢治は生涯独身を通しました。この恋の破局と、白い百合の運命。賢治のこの恋に対する苦く、苦しい感情が、この百合で強烈に表現されています。

このお話は不思議な展開を見せますが、これも賢治のこの先の人生や考え方と合致しているように感じられてなりません。

私の場合、屁理屈を覚えた(笑)高校生の頃にこの本を読んだわけですが、もっと小さい頃に読んだら、どう感じたのでしょうか?

単に、「意味不明??」のお話だと感じ、忘れてしまったのでしょうか。それとも、「意味はよく分からないけれど、夢か現実なのか分からない、不思議なお話」として、記憶にとどめていたのでしょうか?今となっては、確かめようがありませんが…。

やはり、屁理屈を覚える前に、真っ直ぐに物事を解釈できるうちに、「一度は読んでおいたほうが良い本」というのは多いのでしょう。これも、その一つかな?

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2006年11月24日 (金)

いつか子供に読ませたい!60

民話、昔話は大好きー何度もこのブログで書いてきました。

一度も行った事のない国、旅行、仕事等、どんな理由にせよ一度は行った事のある国ー。私は、もっといろんな国の民話や昔話を読んでみたいと思っています。

ハンガリーには、10年近く前、仕事で行った事があります。ハンガリーに関してあまり知識はありませんでしたので、行く前に、いろんな本を読み漁りましたが(笑)。

とても良い国でした!!何よりも、食べ物やワインが美味しい(笑)。ハンガリーの強いお酒、パリンカ(ウオッカと同じくらい強いです)も美味しかった!治安も良い!気さくな人が多い!

当時の東欧諸国は、まだまだ落ち着いていない国が多かったようですが、ハンガリーに関してはそうは感じませんでした。既に、西欧のような(?)開放的な雰囲気でした。

日本国民にとって、ハンガリーはあまり馴染みのない国なのかもしれませんが(私は今は違います!もう一度、行ってみたい国です!!)、ハンガリーの方々にとって、日本という国は親しみがあるようですし、とても優しく接してくれます。

仕事とは言え、とても楽しく、良い思いでとなっています。

そんな懐かしさから、「ハンガリー民話集」を見つけて、読みました…。

ハンガリーは、よく、「東洋と西洋の両文化が触れあい、複合している」なんていわれます。確かに、ハンガリーには、かすかにですが、何かアジア的なものも感じます。

ハンガリーも日本と同様、名前は「姓・名前」の順番なのだそうです。「日本人と繋がりがあるかも?」なんて、ハンガリーの現地ガイドの方は仰っていました。

この本は、ハンガリーの民俗学者、オルトゥタイという方が書いた民話集から43話を収録しています。

どこかで聞いたことのあるようなお話ももちろんありますが、世の中を痛烈に風刺しているお話が多いような気がします。それも、農民や貧しい階級の方々の目から見たと思われるものが多いのです。これも、ハンガリーという国の歴史事情と関係があるのではないでしょうか。

知恵があるものが、最後には欲しい物が手に入る!なんてお話が多いです。虐げられた階級の人々の願望が巧みに表現されていて、かなり面白いです。

ハンガリー人に敬愛されている、マーチャーシュ王にまつわる民話も収録されています。

ハンガリー独特の言い回しが多用されていて、新鮮でした。子供にもいつか読ませてあげたい本です。

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2006年10月11日 (水)

いつか子供に読ませたい!58

「友情」をテーマとした小説は、たくさんありますよね。

お気に入りの歴史小説家である、ローズマリ・サトクリフの書いた、「三つの冠の物語―ヒース、樫、オリーブ」も、友情をテーマとした短編集です。

ヒース、オーク、オリーブの三つの冠にまつわるお話で、それぞれ、ケルト、ローマ、ギリシャが舞台となっていて、時代も異なります。歴史小説が好きな方も楽しめる設定ではないでしょうか。

そして、どのお話にも、戦争(歴史上、有名なもの)や争いが関わっています。

囚われの身となって出合うケース、立場や役割は違うが同じ軍隊に所属し、共に戦い、助けあうケース、長期に渡る戦争中ではあるが、戦争や地震、疫病すら妨げることができない300年以上も続く4年ごとの「オリンピック」の開催により、休戦状態となり出会うケース。

友情をテーマとしていますが、一方で、争いや戦争がもたらす悲劇も浮き彫りとなっています…。

どれも密度の濃い、好きな作品なのですが、敢えて一番好きなものを選ぶとすれば、古代オリンピックを舞台としたオリーブの冠の物語でしょうか。

スタディオン往復走(スタディオンは約185メートルで元オリュンピア競技場の長さ)の少年の部に選ばれたアテネのアミュンタス。

選手宿舎の泉の前で、同じ競技に出場するスパルタの少年、レオンと出会います。

二人は直ぐに、お互いに最も優れた能力を持つ最高のライバルだと認め合い、惹かれ、行動を共にする事が多くなります。

そんなある日、レオンは川沿いで土の中に半分埋まった鎌の刃で足を切ってしまうのです。深く切れたレオンの足。レオンは強がりますが、アミュンタスはその言葉の中に言い知れぬ不安を感じます。

レオンは結局、競技に出場できることになるのですが、アミュンタスは競技開催まで、この事実ゆえに、戦い方を悩む事となってしまうのです…。

レオンへの友情。明らかにこの傷が走りに影響するだろう…。自分は友人として、最高のライバルとして、どう戦えば良いのかー。こういう状況を経験した人は少なくないと思います。

アミュンタスの選択、レオンの様子、競技の結末、最後に訪れる別れ…。目が離せない展開になっています。

子供が、こういう類の本を好きになるかどうかは分かりませんが、いつか読ませてみたい本の一冊です。

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2006年9月12日 (火)

久しぶりに…8

先日、ここのブログに来てくださる、私以上に本が好きな(笑)お友達から、あの三島由紀夫さんの「金閣寺」の話が出ました。

しばらく読んでいませんでしたね~。で、また読みたくなってしまいました(笑)。

一度読んだ本でも、話題に上ったり、その作者の名前やゆかりのある場所がニュースで取り上げられたりすると、またその本を読みたくなるー私の悪い(笑)習性です。

何度読んでも、金閣寺の描写、そして、人物描写(特に主人公の青年の心理描写)に引きずり込まれ、夢中になってしまいます。

登場人物の心理描写が精密な本というのは、読んでいて推理小説以上に緊張感を感じますし、途中で止められなくなります。この「金閣寺」もその1冊です。

そして、誰の目にも「美しい」はずの金閣寺が、読み進むにつれて、何か得体の知れない、生き物(怪物)のような感じすらしてくるのです!!この生き物が、主人公の青年(溝口)の心理にいろんな場面で影響を及ぼしていきます…。

この溝口青年が病的で歪んでいる、と仰る方は多いかもしれませんが、私は柏木という溝口の友人(?本当に友人と言って良いのでしょうか?)のほうが、病的で歪んでいると思います。

柏木の持つ、壮絶なコンプレックスが、溝口に対して、ああいう言動を取らせた(利用しているようにも見えます)のでしょうか?柏木に対して、私はあまり共感できなかったので、この推測は正しくないのかもしれませんが…。

「金閣寺」の登場人物は、全て、心の中に深い闇が存在しています。一見、そんなものとは縁のなさそうな人物も、後で「心の中に抱えていた本当のもの」が見えてきたりします。人間は、みんなそういうものなのでしょうか?私は、自分の心の中が見えていない??

また、物語の冒頭に登場する「有為子」という女性。この女性が、溝口青年の後々の言動や心理に大きな影響を与えているのは間違いないと思います。

金閣寺や青年の父親だけでなく、この有為子という女性も、溝口青年にとって、大きなもう一つの柱になっています。

こういった様々な要素が絡み合い、溝口青年の心の中に芽生え始めた「金閣寺を焼かねばならない」ー。この結末に突き進んでいく青年の心理描写は、何度読んでも飽きません。圧倒されます。

それにしても…。こういう奥深い小説の感想は難しい(笑)。

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2006年8月 7日 (月)

いつか子供に読ませたい!57

イギリスの「アーサー王の死」(まだ、このブログでは取り上げていませんでした…。また後日、取り上げてみたいものです。)を読まれた方は多いでしょう。

このアーサー王より古い時代の英雄、ベーオウルフは、案外、知られていないようです。

元は、取っ付き難い印象のある、英国最古の叙事詩です。あのトールキンは、この叙事詩を愛したと言われています。

これを、ローズマリ・サトクリフが再話したのが、「ベーオウルフ 妖怪と竜と英雄の物語―サトクリフ・オリジナル〈7〉」です。

このお話、少々、不思議なところがあって、英国のものなのか、北欧のものなのか…。古語英語で書かれているものなのですが、舞台はスウェーデンやデンマークなのです。

ま、私も、この程度しか知りませんが(笑)。

翻訳が少々古めかしい文体のような気がしますが、読みやすく、あまり気になりません。登場する人物や、怪物の描写もかなり迫力がありますので、正直、面白いです。

三十人力と言われた若き英雄、ベーオウルフ。父親の恩人である、フローズガール王の国が人を食べてしまう怪物グレンデルに荒らされていると聞き、グレンデル退治に出かけます。

そして、後半の物語は、老いてもなお、強く、勇ましいベーオウルフが、宝を守る、火を吐く竜を退治するお話です。

私が特に好きなのは、前半のグレンデルとの戦い。グレンデル登場の場面のオドロオドロしくて迫力がありますが、何と言っても、息子を失ったグレンデルの母親が凄まじいです。まさしく、妖怪。でもこの妖怪(怪物)のなかに、母親としての感情や優しさも感じます。

とは言え、後半の竜退治の部分も良いですよ~。ま、後半のお話に関しては、いろんな事情により、あまり詳しくは書けませんが(笑)。

伝説の人物を取り上げている本、というのは、いつの時代も興味をそそられるものです。私が、大好きなジャンルですね。

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2006年7月20日 (木)

久しぶりに… 6

堀 辰雄さんの「風立ちぬ」を初めて読んだのは、いつだったか…。実は、覚えていません。

この本を読んだ当時の私は、おそらく、「人の死」について真剣に考える、という事がなかったのでしょう。

でも、30台半ばを過ぎると、「人の死」について考える機会が多くなるものです。そんな時に、ふと目に留まった「風立ちぬ」を読んだのです…。

この本の風景の描写の美しさは、他に比べるものがないのではないか、と思うほどです。でも、それが昨日、今日の鮮やかな描写ではなく、何となく、遠い過去を思わせます。

そして、この風景の描写の中に見え隠れする、「やがて訪れるであろう、恋人の死」と「二人の思い」…。季節は静かに移り変わっていきます。

あからさまな、はっきりとした表現を使っていない、静かな穏やかな描写なので、余計に悲しく、寂しく感じます。

主人公の男性が見つめる、恋人の節子…。節子はいったい何を思い、何を望んでいたのか…。私の場合、一度では読み取ることができませんでした…。

一見、平易な文章のようですが、複雑なものが隠されているー改めて読み直したとき、そう感じました。

最後の日々を、山の中のサナトリウムで二人で過ごすわけですが、これは、例えようもなく、辛いのではないでしょうか?こういう状況だと、現実(節子の病)から目を背ける事も、逃げる事もできないのですから…。

こういう最後の日々を過ごした節子は果たして幸せだったのでしょうか?そして、主人公は??

最終章の主人公の言動に、特に深い悲しみを感じます…。

確かに、初めて読んだときは、印象の強い本ではなかったのですが、今は違います。あらゆる場面に「死」を意識させる、忘れがたい本となってしまいました。

何となく、悲しい文章になってしまいましたが、それは、この本の描写が頭の中から離れないからでしょう!!

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2006年7月18日 (火)

いつか子供に読ませたい!56

黒人奴隷に関する本はいろいろありますし、私もいくつか読みました。

人種差別…これは、現代でも消えていませんし、過去も含めて正面から見つめなければならないものだと私は思っています。

最近読んだ、黒人奴隷に関する本で、「秘密の道をぬけて」は、かなり印象に残った、良い本です。漢字に振り仮名を振っていないので、小学校低学年の子供には難しいと思いますが…。でも、必ず、いつかは読ませたい!と強く思っている本です。

南北戦争が始まる少し前の1850年代が、このお話の舞台です。奴隷制度を巡り、アメリカでは、激しい議論が戦わされ、犠牲になった奴隷がたくさんいます。

この時代に、「地下鉄道」と呼ばれる、秘密の組織が実在したそうです。

逃亡した奴隷を捕まえようとする、奴隷の雇い主たち。そんな奴隷を心から助けたいと願い、わが身の危険も省みず、無償で奴隷たちの逃亡に手を貸していた人たち…。

「地下鉄道」とは、そんな奴隷たちを助けたいと願う人たちの集まりだったのです。

主人公の女の子、アマンダの両親は、この「地下鉄道」の組織の人たちです。

ある夜、アマンダは、この両親の秘密を知ってしまうのです…。

黒人の家族を家の秘密の部屋に匿い、休む場所と食料を提供します。最終的に、この家族は、「自由の国」カナダを目指すと言うのです。

ほんの短い時間ですが、いろいろな話をするうちに、この黒人の家族の娘のハンナとアマンダは、強い友情で結ばれていくのです。

真実に基づいた、ハラハラする展開に私は夢中になって読みました。

両親と共に、黒人家族を助けたいと願うアマンダ…。私もついついアマンダと同じ気持ちになっていきました。

暗く、つらいお話ではありますが、黒人家族の決して希望を失わない強さを感じます。

お話の最後に出てくるハンナの手紙には、感動します。

もうこんなつらく悲しい事が、二度と起こりませんように…。

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2006年7月11日 (火)

子供を本好きにするには大人が楽しむ!121

ケストナーさんの本は、以前もこのブログに書きました。

いろいろ考えてみると、ケストナーさんの本、私は結構好きなんでしょうね。

子供の頃に読んで、忘れられないケストナーさんの本の中に、「エーミールと探偵たち」があります。

子供の頃、「探偵ごっこ」のような遊びを経験した方は多いのではないでしょうか。でも、これが現実の事となれば…。

この本には、そんなドキドキするような、少年たちの体験が書かれています。読んだ方も多いでしょうね。私の子供にはまだ少し早いようですが、いずれ、必ず読ませてあげたいと思っている楽しい本のひとつです。

都会のベルリンの住む、おばあちゃんの家へ一人で行くこととなった、少年エーミール。

おばあちゃんに渡すお金をお母さんから預かり、服のポケットに大切にしまいます。そして、自分の荷物と花を持って汽車に乗り込み、ベルリンへと向かうのです。

でも、汽車の中で居眠りをしている間に、お母さんから預かってきた大切なお金を「山高帽」をかぶった男に盗まれてしまうのです…。

それに気づいたエーミールはこの泥棒の追跡を始めるのですが、何しろ、見知らぬ土地。でも、警笛の音と共に、エーミールの強い味方となる、「探偵」が現れるのです!!

「探偵ごっこ」をするような年齢の子供たちが、本物の泥棒を追跡します。子供なりの知恵、子供なりの連携、大人も驚くような子供の行動力…。

子供たちが、一体、どんな方法をとって泥棒を捕まえるのか…。気になってしまって、最後まで一気に読んでしまいました(笑)。

いわゆる「推理小説」ではないのですが、ワクワクしながら読んだ事を今もはっきり覚えています。

ケストナーさんの小説でなぜか思い出すのが、「チョコレート」。でも、食べるほうではなく、「飲む」ほうです。このお話でも出てきますが、他の小説(ふたりのロッテ)でも出てきますよ!

「飲みたい~」なんて思っていたことを懐かしく思い出しました(笑)。

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2006年6月30日 (金)

子供を本好きにするには大人が楽しむ!117

スペインのベラスケス、という画家をご存知の方は多いと思います。あの有名な「女官たち(ラス・メニーナス)を描いた画家です。

中央にまだ5才だった王女のマルガリータ。国王、女王、女官、ベラスケス、そして、「道化」と呼ばれる人たちが描かれています。

実は、この絵にまつわる話として書かれた「宮廷のバルトロメ」を読みました。

フィクションだと思われるのですが、この本には解説がついていないので、なんとも言えません。

この本の主人公は、バルトロメという少年が主人公です。実は、バルトロメは障害を持っていて、誰かに支えてもらわないと自分で歩くことが出来ない体なのです…。

父親は、首都マドリードで暮らす王女マルガリータの御者を務めていて、離れた場所に住んでいる家族の元にはなかなか帰って来れません。

ある日、家族みんなでマドリードに引っ越すことに。でも父親は、バルトロメを知人の家に置き去りにしようとします。

障害を持つバルトロメが都会の人目に触れることを恐れ、彼の将来をこう案じたからなのです。「こういう障害を持った人間は、都会では将来、乞食をするしかない。人に蹴られ、あざけられて暮らすしか道はないのだー。」

この辺りから、バルトロメの心の叫びを痛いほどに感じます。

結局、他の家族や、「決して人前には出ない。どんなに辛くても我慢するから。」というバルトロメの懇願を父親は受け入れ、マドリードでの生活が始まります。

兄弟たちは、何とかバルトロメが生きがいや楽しみを持てるように知恵を絞りますが、これが結果として、信じられない悲劇を生みますー。

この悲劇が、冒頭に書いた、あの絵に繋がっていきます。

細かい内容をここで書くわけにはいきませんが、あの絵の中の人物たちとバルトロメは関わりを持つこととなります。

差別や妬み、偏見、人の痛みや苦しみを理解できない(教えられていない)上流階級の人間たち(ここでは王女とそのお付の女官たちですが)ー。特に、無知とは言え、王女の発言にはぞっとしました…。

今もこういう悲劇がどこかで起こっているのではないでしょうか?

「ぼくは人間だ!」と叫ぶバルトロメ。障害を持ってはいますが、困難を乗り越えようと懸命です。

バルトロメを心配して奔走する家族と対照的に、父親の冷たい発言や偏った考え方が時々目に付きますが、実は、本当はバルトロメを心配し、子供として愛しているのではないでしょうか?私はそう感じました…。

私が最近読んだ本の中では、かなり強烈な一冊です…。

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